ヒップホップを経験した時代からみた、永遠に完成しないソウル&ファンクの大辞典。
このアルバムの最前線で攻撃を仕掛けるのはまだ20代の頃のRandy Brecker(ランディ・ブレッカー)。兄のマイケルも参加しているが、ここはランディの一人舞台。彼のトランペットは時折、同時期の電化したマイルス・デイビスのように歪んだり、都会の空を悠然と飛ぶ鷲のように変化したり変幻自在。
しかしこのアルバムの真の聞きどころは全員で紡ぎ出すリズム。二人のドラマーはひたすら細かく刻み、ギターのBob Mann(ボブ・マン)は一人だけ完全にファンクを演っている。ハル・ギャルパーはエレクトリック・ピアノでロックともジャズともいえない世界を彷徨い、ベースとともにリズムとホーン・セクションをつなぐ。
ミュージシャンが苦悩し、混沌とした時代だからこそ生まれた作品。張りつめた緊張感がビシビシとグルーヴになって押し寄せる。
Producer: Bob Shad
1973年