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ソウル&ファンク大辞典

ヒップホップを経験した時代からみた、永遠に完成しないソウル&ファンクの大辞典。

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Prince / 1999

ファンク界のダーク・ヒーロー誕生

プリンス 1999,
Prince,
1982
人類が世紀末を意識し始めた1980年代。世間ではいわゆる不健全な文化が好まれるようになり、音楽界にも純粋なものだけでは飽き足りず、雑多な要素を複雑に内包したアーティストが次々に登場してきた。こうした状況下で社会問題やサブカルチャーを連想させるあらゆる猥雑なイメージを背負って登場し、アイコン化したのがプリンスだった。デビュー当初はミネアポリスから出てきたばかりの繊細な文学青年のような印象が強かったが、“Controversy”あたりで変化しだし、このアルバムでは完全に猥雑な時代を象徴するダーク・ヒーローのイメージをまとうようになっていた(1989年にプリンスが手がけたティム・バートンの映画『バットマン』のサントラがそれを象徴している)。

当時のブラックミュージックのトレンドであるエレクトロ・ファンクを完全におさえながら、“1999”ではポップスやロックの要素も強く押し出しすようになった。表現方法は全く違うが、ほぼ同時期にリリースされたマイケル・ジャクソンの『スリラー』とも方向性は似ている。ただしマイケルの場合はポップスターへの志向が非常に強かったが、プリンスの場合は自らのルーツであるブラック・ミュージックの基本線は常に守っていた。その観点から考えるとプリンスは、ルーツに革新的な手法を取り入れたリトル・リチャードやスライ&ザ・ファミリー・ストーンの流れをくむアーティストであるといえるだろう。

曲は初期プリンスの代表曲ばかり。特にタイトル曲のA1 “1999”とA2 “Little Red Corvette”は、スーパースターの座を獲得するきっかけとなった作品。個人的に好きな曲はD1 “Lady Cab Driver”。このアルバムの中で最も卑猥な曲だが、こういうシンプルでタイトな曲こそ、プリンスのエキスを一番感じやすい。ほぼ一人でこのグルーヴを出すなんて、天才としかいいようがない。

プリンスは生涯を通してアーティストとして実験的な試みを繰り返しながらも、常に第一線で活躍し続けた。これほど長期間にわたって挑戦を忘れずに高品質な作品を作り続けたブラックミュージシャンは彼以外に誰も思い浮かばない。

Producer: Prince
1982年



Little Red Corvette - Prince
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