Twitter Facebook

ソウル&ファンク大辞典

ソウル・クラシックスの大辞典を構築中! スマホ対応なので出先でもどうぞ。

A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | UVW | XYZ
ABC | DEF | GHI | JKL | MNO | PQR | STU | VWXYZ
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | UVWXYZ

Tom Waits / SWORDFISHTROMBONES

記憶の中にだけ存在するアメリカの民の歌

トム・ウェイツ Swordfishtrombones,
Tom Waits, 1983
1973年に“Closing Time”というまるで場末のバーの空気感をそのままパッケージしたような作品でデビューし、ピアノをバックに歌う「酔いどれ詩人」のイメージが完全に定着したトム・ウェイツ。その彼が約10年間にわたり築いてきたイメージを全てぶち壊し、新たな世界(しかも、すでに忘れられた過去の世界)に自らの身を「演劇的」に置いた野心的な作品。

トム・ウェイツが目指したのは、アメリカがまだ現在のアメリカではなく、国としての程を成す以前の時代。希望を抱いて新天地を目指したものがいる一方、強制的にこの地に連れてこられたものの子孫として暮らす人々もいた。そこにはジャズやブルースの原型はあったが、ヨーロッパの田舎やアフリカ各地の音も存在しており、まだそれぞれの音が溶け合っておらず、偏見や様々な世界観が混在していた。

この限りなく現実に近い架空の時代を、一つの音世界にまとめて再構築したのが、本作『ソードフィッシュトロンボーンズ』。トム・ウェイツは過去の音のかけらをかき集め、まるで実際に存在したかのような音楽版の見世物小屋を作り上げ、自らはいかがわしい興行師の役回りを演じた。現実の歴史においては、時に暴力的であり、侵略的でもあったが、トム・ウェイツは善悪全ての要素を引き受け、記憶のタイムカプセルにこれら音楽を詰め込んだ。

使用する楽器は伝統的なジャズやブルースからは逸脱し、民族楽器や欧米の古い楽器、シンセサイザー等も併用した。そして現代音楽的ともいえるアヴァンギャルドなアプローチを採用し、時空までも捻じ曲げた。

このアルバムではトム・ウェイツの妄想と記憶の中にだけあるアメリカ民衆音楽を再現している(という仮説を立ててみました)。

Producer: Tom Waits
1983年



In The Neighborhood - Tom Waits
関連アーティスト