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『ラプチャー』はアニタ・ベイカーにとってソロ2枚目のアルバム。本作は前作以上のヒットとなり、彼女はどん底から駆け上がり、完全に大スターの地位を手に入れた。この作品で彼女は、クリエイティブに関する責任も担当するようになり、プロデューサーとして旧知のマイケル・J・パウエルを招聘することができた。
アニタ・ベイカーの代表曲“Sweet Love”を筆頭に、このアルバムからは“Caught Up in the Rapture”、“Same Ole Love”、“No One in the World”、“Watch Your Step”の5曲がシングルヒットしている。1987年のグラミー賞ではアルバムが「最優秀女性R&Bヴォーカル・パフォーマンス」、『スウィート・ラヴ』が「最優秀R&Bソング」を受賞している。
ラジオ番組から生まれたクワイエット・ストームというカテゴリーを象徴するアルバムをあげるとするなら、70年代なら名前のきっかけになったスモーキー・ロビンソンの『ア・クワイエット・ストーム』、80年代ならこのアニタ・ベイカーの『ラプチャー』をあげる人が多いだろう。このジャンルはそれまでのソウルやファンクとは違い、政治的メッセージはほとんど含まれないが、それはアフリカ系米国人が大都市に移り住むようになり、周囲と軋轢なく音楽を楽しむための知恵でもあった。このストイックさにはある意味、時代が大きく変わる過渡期を乗りきるための美しさと悲しみが表現されている。
Producer: Michael J. Powell, Gary Skardina, Marti Sharron
1986年