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ソウル&ファンク大辞典

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Karen Dalton / IT’S SO HARD TO TELL WHO’S GOING TO LOVE YOU THE BEST

アメリカを奏でる路傍の石

カレン ダルトン It’s So Hard to Tell
Who’s Going to Love
You the Best,
Karen Dalton,
1969
カレン・ダルトンの音楽を初めて聞いたときはぶったまげた。久しぶりに未知の本物に触れることができて嬉しく思った。声や曲を聴いても、肌の色を超越していて、どんな人かも想像がつかない。あらゆる音楽や文化の香りもする。

アメリカ中南部のオクラホマ州で育ったカレン・ダルトン。21歳までに2度の結婚と離婚を経験、60年代初頭にニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジに移り、ボブ・ディラン等のフォーク・シーンの新星たちと交流を持つ。

“It’s So Hard to Tell Who’s Going to Love You the Best”で聞くことができる音は最小限のシンプルな構成で、カレン・ダルトンはつぶやくように歌いかける。彼女の歌声は、ビリー・ホリデーに例えられるが、本人は1920年代に活躍したブルース・シンガーBessie Smith(ベッシー・スミス)に影響を受けたという。

グリニッチ・ヴィレッジで出会ったTim Hardin(ティム・ハーディン)の曲をはじめ、フォーキーなブルースがほとんどを占めるが、変わったところでは、Otis Redding(オーティス・レディング)の名曲“I Love You More Than Words Can Say”のカバーもある。オーティスのバージョンとはかなり解釈が違うが、ソウルの神に匹敵するほど素晴らしいカバーソングだ。

これほどの才能を持ちながら、音楽ビジネスには興味がなく、レコード会社の提案もほとんど聞き入れなかったらしい。私生活では、ドラッグとアルコールに溺れてしまい、正式なアルバムは生涯2枚しか残していない。

ソウルやジャズではなくフォーク・シーンから現れた白人女性ミュージシャン、カレン・ダルトン。ビリー・ホリデーのようなスターや社会のアイコンにはならなかったが、路傍の石が語りかけるようなディープなアメリカを体現した貴重なアーティストのひとりである。

Producer: Nick Venet
1969年



I Love You More Than Words Can Say - Karen Dalton
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