ヒップホップを経験した時代からみた、永遠に完成しないソウル&ファンクの大辞典。
土星からやってきたものの、名前の由来はエジプト神話の太陽神ラーからつけたらしい(彼によると、この名前が本名で、他の名前が仮名)。この辺りを考えると、アース・ウインド&ファイアの一連の大ヒット作のアルバムジャケットや衣装も、サン・ラーの概念そのものともいえる。
奇々怪々な彼の作品群の中でも比較的メジャーなアルバムがこの『スペース・イズ・ザ・プレイス』。タイトルやアルバムジャケットからして、サン・ラーを代表する作品であり、幅広い音楽性からも、彼の人生を統括しているような気もする。アヴァンギャルド・ジャズの文脈で語られることが多いが、女性ヴォーカルを導入するなど、親しみやすいアレンジもされており、ジャズに興味のない人でも十分楽しめる作品。深淵な「アフロフューチャリズム」の世界へと繋がる正門の役割も果たす最高の一枚。
芸術において新しい概念の提示ほど重要なことはない。その点でもサン・ラーはゲテモノ扱いではなくもっと評価されるべきであり、なんならノーベル哲学賞を彼のために新設してもいいぐらいである。
Producer: Alton Abraham, Ed Michel
1973年