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ソウル&ファンク大辞典

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Yola / WALK THROUGH FIRE

現実逃避によって時代と国境を超えたシンガー

ヨラ・カーター Walk Through Fire,
Yola, 2019
奇跡のようなノスタルジックでドリーミーなサウンド。Yola(ヨラ)ことYola Carterのアルバム“Walk Through Fire”は、2019年の作品とは思えないほどオーガニックな香りで溢れている。彼女は小さな頃から、60年代のカントリーやスタックスの頃のソウル、ステイプル・シンガーズやオーティス・レディングのようなゴスペルフィーリングあふれる作品に強い影響を受けてきたという。

しかし、ヨラのことを知ると意外なことばかり。まず彼女は米国人ではなく、イギリスのブリストル出身。ドリーミーなサウンドとは程遠い厳しい家庭環境で育ったという。周辺地域では人種差別による暴力事件は珍しいことではなかった。彼女の両親は収入も少なく、極貧生活を強いられていた。ストレスで声を失いかけたこともあった。ヨラの遥か彼方の昔の音楽への憧憬は、一種の現実逃避の方法だったのかもしれない。

Phantom Limbのメンバーとして、逃避のための夢の片道切符を掴み、憧れのスターだったドクター・ジョンやソロモン・バーク、キャンディ・ステイトンのサポート・アクトを務めることもできた。しかしバンドは解散し、再スタートのソロデビューとなるのが本作“Walk Through Fire”。

プロデュースはブラック・キーズのフロントマンでもあるダン・オーバック。レコーディングは、ヨラにとって憧れの地でもあるナッシュビル。スタジオ・ミュージシャンには、ジョニー・キャッシュ、ダスティ・スプリングフィールド、エルビス・プレスリー等の作品を支えた伝説のミュージシャンが名を連ねた。

夢のような環境を自らの力で掴み取ったヨラ。ソウルファン、カントリーファン、ロックファンにもきっと彼女の感動が伝わる素晴らしい作品。

Producer: Dan Auerbach
2019年



Ride Out In The Country - Yola
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