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ソウル&ファンク大辞典

ヒップホップを経験した時代からみた、永遠に完成しないソウル&ファンクの大辞典。

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Sugarhill Gang

ヒップホップ初のメジャーヒットは完全なパクリ!?

シュガーヒルギャング Rapper’s Delight,
Sugarhill Gang,
1980
シュガーヒル・ギャングの代名詞といえば、Chic(シック)の“Good Times”を元ネタにして大ヒットした1979年の“Rapper’s Delight”で決まりだが、その他にもいい曲が多い。

例えば1980年の“8th Wonder”は、Johny Taylor(ジョニー・テイラー)の“Ever Ready”と、7th Wonder(セブンス・ワンダー)の“Daisy Lady”をベースにしたヒップホップの古典であり、その後、Public Enemy(パブリック・エネミー)の“Public Enemy No. 1”やBeastie Boys(ビースティー・ボーイズ)の“Shake Your Rump”にシュガーヒル・ギャングのバージョンがサンプリングされている。またAfrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)が「ヒップホップ界の国歌」と呼んだIncredible Bongo Band(インクレディブル・ボンゴ・バンド)の“Apache”の最高のカバーバージョンをシュガーヒル・ギャングも残している(インクレディブル・ボンゴ・バンドのアパッチ自体がカバーであり、本当のオリジナルは英国のギターバンド、ザ・シャドウズ)。“8th Wonder”と“Apache”は1982年のアルバム“8th Wonder”に収録されている。

1984年のアルバム“Livin’ In the Fast Lane”にもいい曲がある。1曲目の“Girl”はMoments(モーメンツ)のオリジナルを凌ぐぐらいハッピーなチューンだ。次のタイトル曲にはOlympic Runners(オリンピック・ランナーズ)の“Put the Music Where Your Mouth Is(1974年)”のベースラインが使われた。彼らの音楽は、後年のヒップホップのようにメッセージ性はほとんどなく、ひたすら楽しいパーティーミュージック。サウンドもペラペラ感満載だが、だからこそ、今聞いてもその楽しさが伝わってくる。

この3人組の真の主役はプロデューサー兼Sugar Hill Records(シュガーヒル・レコード)の創設者でもあるSylvia Robinson(シルヴィア・ロビンソン)だろう。彼女が『ラッパーズ・デライト』をレコード化すれば金になると思い、桃太郎がイヌ・サル・キジを従えたように、シュガーヒル・ギャングのメンバーをひとりずつ集め、録音にまでこぎつけた。シックの『グッド・タイムズ』をベースにMCがしゃべるというスタイルは、1970年代後半のニューヨークのクラブでは数人のDJが実践していた定番ネタだといわれ、言ってみれば彼女がこのアイデアを誰よりもいち早くパクって音源化し、ヒップホップ初のメジャーヒットを生み出した。ただしヒップホップをパクリかどうかで語ることにはあまり意味がない。シルヴィア・ロビンソンはGrandmaster Flash & the Furious Fiveの“The Message”もプロデュースしており、間違いなく先見の明があり、ヒップホップ黎明期に多大なる貢献をしている。



Livin'in the Fast Lane - Sugarhill Gang
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